
 銭洗弁天裏。「境界」からは、いたるところで海が見える。
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「海」という文字は暗い水、こんとんとした未知の世界をあらわしている。中国沿岸は黄土の堆積によって、有明海のような遠浅の干潟が分布している。遣唐船のみならず地元出身の鑑真でさえ、遭難したのは大洋ではなく、すべて沿岸部だった。
世界初の中国旅行記を残したのはもちろん日本人だ。円仁の『入唐求法巡礼行記』はきわめて史料価値の高い日記であり、成尋の日記『参天台五臺山記』、短いものでは「唐大和上東征伝」「入唐五家伝」をはじめとする日中往来の高僧伝、「六国史」にみえる遣唐使記録の断章など、その数は少なくない。玄奘の「西域記」などが無味乾燥な地誌であることと比較しても、写実性をむねとする平安文学の筆力は卓越したものだ。
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