鎌倉好き集まれ!十六夜さんの鎌倉リポート・第60号(2010年11月27日)

鎌倉文学散歩

松嶺院と文人

帰源院をおりて山門まで戻り、反対側に「松嶺院」があります。境内には草木が多く、特にボタンの花が見事なことでも知られています。この寺では、小説家「有島武郎」が彼の代表作の一つとなった「或る女」の後編を執筆しています。

「有島武郎」は明治十一年(1878)東京都文京区に生まれました。弟に洋画家の「有島生馬」、小説家の「里見弴」がいて、芸術家三兄弟と称えられています。武郎は英文の日記をポケット日記に残しています。「松嶺院」に滞在している日々の様子がうかがえます。最初の一日である大正八年三月三十一日を紹介してみましょう

今日から「或る女」の原稿を書くために、円覚寺の松嶺院に閉じこもる。千代が一緒に来て、すっかり部屋の掃除をしてくれた。天気は上々。梅の花はすでに散っている。一重桜が咲き始めた。桃もだ。柳屋で食事をする。

松嶺院境内の鉢物

平成22年11月27日撮影